ミティラー美術館徒然草

新潟県・十日町市の濃緑の森にある美術館での日々の出来事・感じた事を、館長&スタッフが心の趣くままに綴ります。

美術館制作室の模様

すっかり春らしくなった大池ですが、ここのところ寒い日が続いています。日中日が出たときはほんわりと春の陽気を感じられますが、朝晩はとても冷え込んでいます。もう少しで花が開きそうな八重桜もちょっと躊躇してしまったかもしれません。特に館内では冬仕様の服装ですし、部屋によってはストーブも未だ手放せずにいます。

制作風景サダシさん制作風景ゴルカナさん






























現在美術館2階の制作室では、ワルリー画の描き手、サダシヴ・ジブヤ・マーシェさんとシャンタラーム・ゴルカナさんが公開制作を行っています。サダシさんは「ベールから生まれた娘」を、ゴルカナさんは「豊穣の女神コンサリーデーヴィー」をそれぞれ描いていて、もう間もなく完成です。制作室にはこの冬に、サダシさんが館長とのコラボレーションで完成させた大作が展示してあります。テーマはワルリー村にはない「屋根の雪下ろし」。冬の雪下ろしの体験から大きな作品が生まれました。大きな大きな美術館の屋根の雪を大勢で下ろしている風景の中をよ〜く見てゆくと、見覚えのある人や物がありました。その1つ1つを全部見つけて当てたと思っていたら、最後に「これ、Rちゃん」とサダシさん。「ん?これは私?」。いつの間にかワルリー画に登場してしまい・・・1人戸惑うRでした。

ワルリー画の描き手2人の公開制作は5月下旬ごろまでを予定しております。雪のとけた美術館への、皆さまのご来館をお待ちしております。

ゴルカナさん「ウド」を採るの巻

今大池の森では、春風の伴奏にのって鳥たちの合唱があちらこちらでハモっています。その中でも特に、発声練習を十分に終えたウグイスやヤマバトのメロディーは、思わず輪唱したくなるような、やさしい春のあたたかさを感じます。ブナの木も芽吹いて日に日に鮮やかなグリーンを広げ、ほおの木ももう少しでポロッと芽吹くところまできました。山桜が咲いたり、赤・白の椿のつぼみが開いたり・・・雪解けと共に森全体に突然あたらしい精霊たちが舞い降りてきたかのように、ぐんぐんと変化していく。そうした日々の変化の発見は、私たち人にもあたらしい活動エネルギーを注いでくれるように感じられます。

ウド1さて、今朝美術館裏手の崖で山菜「ウド」を発見しました。百聞は一見にしかずということで、早速サダシさんとゴルカナさんを呼んでウドを教えてあげることにしました。まずは一本目。カマを使って取り方を実演すると、二本目のウドにゴルカナさんが挑戦。根っこギリギリまできれいに採れました。小さなウドを何本か採ると、だんだんと欲が出てきて?少し危険な崖の斜面に目がいきます。「あれも、あれも、ウドですね〜?」日本語でそう話すゴルカナさん、どうやら挑戦する気らしい。「う〜ん。あそこは危険だからロープでもつけないと・・・」。

ウドがよく好む粘土質の崖は足場も悪く、掴むことの出来るツルや木も少ないことが多いので、例え立派なウドを発見しても、万が一落ちた時に一人で対処できる場所でないと採らないのが基本です。しかもここは中越地震の時に崩れたところ。そんな私の心配をよそに、ゴルカナさんは「たぶん、だいじょうぶ、と思います」と言うなり行動し始めてしまった!慎重に足を進める彼の少し後を私も行けるところまで下りて、見守ることに。コツを掴んだようで、ウドを発見し採れそうなウドを次々採っていくゴルカナさん。大きめのウドを5本も抱えて上がってきました。流石!

ワルリーさんはスパゲッティーが食べられるので、お昼は採ったウドを使った山菜スパゲッティーを作って一緒に食べることにしました。この「山菜スパゲッティー」はスタッフの生越さんが生前考案したもので、ウドが採れると必ず作るメニュー。ウド、こごめ、とりあしを使って、お酒、醤油、胡椒のみで味付けするシンプルなものですが、山菜のうま味がでてウドの香りとこごめの食感がパスタによく合い美味しいのです。

ウド2ウドは上から下まで全部食べられる山菜。土の下にあった白い部分は柔らかく、ウド独特の苦みと甘みが絶妙なので、そのままスライスしてお味噌をつけて食べるのが乙。贅沢な一時を味わえます。台所に様子を見に来たゴルカナさんにちょっと食べてみてと渡すと、「茹でなくても食べられるの?」とちょっと心配そうでしたが、食べてみると「おいしい〜!」と感激していました。嬉しい発見だったようで、早足でサダシさんを連れて戻ってきました。サダシさんも食べると、「おいしい〜!!」と本当に美味しそうなにっこりとした顔になりました。「サラダにも良いかも!」ととても楽しそうです。ウドのおいしさがワルリーさんにも通じてなんだかこちらの方が嬉しくなりました。

お昼の支度を続けていると、外で2人の話し声が聞こえてきました。もしかして・・・・廊下に行って外をみると、ロープを使って2人でウドを採ってるじゃありませんか!!今日から彼らの食卓にウドのお料理がたくさん並びそうな予感。サブジにもしてみると話していていたので、どんなカレーになるのかちょっと気になるところです。

ワルリー族の2人と大池の山菜

ワルリー画の描き手、サダシさんとゴルカナさんは夕方大池の森を散歩するのが日課になっているようです。道の途中で会う度話題に出るのは山菜のこと。山に山菜を採りに来ている人たちが手にしているものを見て、自分たちでも採って食べてみたそうです!2人とも興味津々で私が夕方近くで採っていると名前を聞きに来たり、調理方法を聞きに来ます。こごめ(こごみ)とゼンマイは一本残して採らないと来年出てこなくなってしまうからと教えてあげると、茶目っ気のあるサダシさんが「あっ!」と手で顔を覆い、ゴルカナさんが笑います。

「こごめ(こごみ)を油で揚げて塩をつけて食べたら美味しかった。」「ゼンマイも木の芽(あけびの芽)も美味しい。」春の山菜が彼らのお口に合うとは嬉しい発見でした。今美術館の脇でこごめが鮮やかな黄緑色の光を放ち、ぐんぐんの伸びてきています。「二日にいっぺんぐらいで山菜を食べるといいです。」という彼らに、明日はこごめをごま和えにしてお裾分けしようかなと思っています。

昨日M.nと一緒に町へ下りたワルリーさん達は、スーパーで山菜が売られていることにとても驚いたそうです。「みんなこの辺にたくさんあるものだった。」とのこと。彼らの方がたくさん山菜のある場所を見つけているかもしれませんね。因みに、ゴルカナさんは昨日美術館の裏山で山菜を採っていると山猫と遭遇、目があって互いに固まり、山猫がどうしようかと躊躇したのち一目散に逃げていったそうです。

最後にもう一つ。日本では昔から「初物」を食べると七十五日長生きすると言われています。個人的には、自分の畑で採れた野菜も良いけれど、山の恵みが分けてくれる山菜の方が自然の生命力が感じられる気がするので、出来るだけ食卓に登場させたいなと思うわけです。さて、この「初物」は先住民・ワルリー族の村でもとても大事にされているそうです。ワルリーの村では大体7月頃、山の大地から最初に出てくる山菜を採ってきて「コリー」というサブジを作るそうです。そしてまず大地の神様に捧げ、それから自分の家族とゲストみんなで少しずついただき、それからターリー(ヤシの実のお酒)を飲んだり歌ったり踊ったりするそうです。このプージャは各家ごとに行われるので、この時期は毎日どこかの家が賑わっているとのこと。ワルリー画の作品の中でも登場するカムリーダンスやタルパーダンスと同じように、ワルリー村では大切なプージャです。

山菜を楽しむ

大池の森は雪もほとんどなくなり山菜の楽しめる季節になりました。
春の食卓に一番最初に登場するのは「ふきのとう」。雪解けの間から土の香りと共に春を知らせてくれるふきのとうは、まずはお味噌汁に入れて香りをみんなで楽しみます。最初は発見するのが嬉しいふきのとうですが、しばらくすると当たり前のようにあちらこちらで顔を出し花を咲かせます。天ぷらにしたりふき味噌にするのはこの時期です。今では池の周りで遠くからでも分かる程存在感を出していますね。

それからこごめ(こごみ)とかトリアシ(鳥の足のような形をしてます)、ゼンマイ、山ウド、あぶらこごめ、うるい、わらび、ぜんまい、木の芽(あけびの芽)、タラの芽などの山菜が山のあちこちで採れるようになります。

今日は木の芽(あけびの芽)、しおで(山のアスパラとも言われてるそうです)、タラの芽を少しまとめて取ってきたので、夕食にみんなでいただきました。木の芽はアクが強く苦みもありますが、日本料理の高級食材としても知られます。たくさん摘んできたのですが、今日は一部をおひたしにしました。きんぴらにしたり、木の芽ご飯にしても美味しいですが、木の芽独特の美味しい苦みを楽しむならおひたしにするのが一番です。写真にとりました。

kinome




















しおではゆでたり、お味噌汁にいれて。山でとれるタラの芽はスーパーで売っているようなあのきれいに揃ったものとは違います。太い木になるタラの芽は存在感が大きくて、つい取り忘れると人の手みたいになっていたりします。今日はそれなりの大きさの物が揃ったので天ぷらにして楽しみました。揚げたてを塩でいただくのが乙かもしれませんね。

大池の森も雪が少なくなり、釣りの人や山菜を取りにやってくる人たちで少し賑やかになってきました。暖かくなって美術館へも足を運んでくださる方が増えるのは嬉しいですね。ワルリー画の描き手、サダシさんとゴルカナさんの公開制作は5月下旬までを予定しています。ご来館お待ちしております。山菜取りも楽しめるかもしれません。

カモシカ登場!5

大池の池に面した斜面に「カモシカ」が現れました!

kamoshika14月20日満月の日の夕方、サダシさんとゴルカナさん(滞在中のワルリー画の描き手)から「熊がいる」と聞き、館長は「そんなに近くまで熊が出るかな・・・」と思いつつも、本当に熊だったら大変ということで仕事を中断し外へ出たそうです。小熊らしき動物が弁天様の裏山の崖から池に面した斜面へと移動していったそうです。ちょうど運悪く町へ下りていた私とM.nはその瞬間を見逃してしまったのです。


結局、熊じゃないんじゃないか、カモシカなんじゃないかと色々と話が出る中、
私とM.nが戻り、何とか映っているその写真を拡大して見ることになりました。

kamoshika2


「ん?足が細くなってる!」「一見熊みたいだけれど、これはカモシカだね。」「な〜んだ。」「やっぱり」



池の側でカモシカを見るなんて、あまりないことなのにその日はあまり実感がないというか、頭の中は夜の満月のことでいっぱいだった私ことR。【満月の写真は美術館のトップページでご紹介しています】

次の日の夕方、お散歩をしていたワルリーさん2人が「カモシカがいる」と教えてくれたので、私も見られるかもしれないと慌ててカメラを持って外にでたのですが、見る影もなく、断念。。。
昨日とほぼ同じ崖の上層部を渡り歩いていたそうです。

しばらくして「Rちゃ〜ん!」というゴルカナさんの叫び声が聞こえたかと思うと、ゴルカナさんが教員住宅から月見亭に向かう斜面を駆け下りてきました。私も再びカメラを抱え外に飛び出し、カモシカを探しました。すると、池の向こうの崖の上層部にカモシカを発見!すかさず望遠レンズをつけたカメラで覗くのですが、あまりの小ささに顔まで見ることは出来ず、おまけにあちらは動いているのでぶれが生じてしまいました。

kamoshika3ワルリーさんたちの話によれば、今日は二頭いたとのこと。最初に彼らが発見したのはおしりのところだけ白くなっているカモシカで、私と一緒に見たのはまた別のカモシカだったそうです。それにしても、私たちは2人の視力の良さに驚いてしまいました。月見亭から100メートルも離れた彼らの部屋の窓からあのカモシカが見えたなんて・・・2.0の私の視力でもカモシカの表情まではとても見えなかったのですから。

村のおばさんの話によると、このあたりにもカモシカは現れるそうです。カモシカというと本村の方でしか見られないと思っていたので、今後しばらく注意してみてみることにしましょう。
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ミティラー美術館

濃緑の森にある廃校になった小学校を利用し、1982年に設立された私立の美術館。ミティラー画をはじめ、インドのコスモロジーあふれる豊かな民族(俗)芸術を収集、常設展示しています。また、来日するインド人描き手の新たなアートの創造の場となり、その作品群はインド政府より量と質において世界に類がないものと高く評価されています。この美術館を拠点に全国への「出張展覧会」や、南の国の文化紹介などの文化活動をしています。2004年10月の新潟県中越大地震で被災のため、1年9ヶ月間休館しておりましたが、2006年7月22日、大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ2006協賛「インド民族アートの世界」展にて再オープン致しました。

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